九州オープンユニバーシティ設立にあたって

私たちはいま,人類の歴史の転換点に生きています.人類の活動は地球環境を変え,世界各地で大規模な気象災害が頻発しています.自然環境を守り,私たちの暮らしを持続可能なものにすることが,人類共通の課題となっています.一方で,多くの国で少子化が進み,2050年までには人口が減り始めると予測されています.日本社会は少子高齢化の点で世界の先端にいます.人口が減る中で,どうやって経済を成長させ,豊かな暮らしを持続するかが,新たな課題となっています.これらの課題に共通するのは「持続可能性」というテーマです.

 九州大学では,2015年2月より「持続可能な社会を拓く決断科学大学院プログラム」を実施し,持続可能な社会づくりをリードできる博士人材を養成するとともに,社会におけるより良い意思決定(決断)のあり方についての新しい科学をいち早く開拓してきました.このプログラムでは,環境・災害・健康・統治・人間という5つのテーマの下で,生物多様性の保全,獣害,防災,災害からの復興,公衆衛生,生活習慣病,過疎化,少子高齢化,食と健康,合意形成などの課題をとりあげ,自治体・企業・教育機関を含む多様な主体と連携して,問題解決型の教育・研究に取り組んできました.

 このプログラムの成果を発展させ,社会と連携した教育・研究活動を本格的に進めるために,私たちはここに「一般社団法人九州オープンユニバーシティ」を設立します.本法人は,ソーシャルビジネス(社会問題の解決を目的とする収益事業)によって,持続可能な社会づくりを推進します.具体的には,会員制の事業体で研究員を含むスタッフを雇用し,国立大学法人では実施が制約されている収益事業(有料の講習・研修,出版,コンサルティングなど)を通じて得た資金を,環境保全・復興・公衆衛生・地域づくりなどに関する調査研究・社会事業に還元し,科学にもとづく社会的課題の解決に貢献します.

 一方で,国立大学法人九州大学と連携し,市民・自治体・企業にオープンな学びの場を提供します.九州大学には環境保全,防災・復興,医学,地方自治,IT,AI,芸術など多くの分野で最先端研究を行っている学生・教員が在籍しています.これらの学生・教員が,地域づくりや復興などの現場に関わることで,多くの人々が調査研究の成果を活用でき,一方で学生・教員は多くの新しい学びを得ることができます.本協会ではこのような市民,企業,自治体などに開かれた科学(オープンサイエンス)を推進します.

 持続可能な未来社会を生み出すために,大学にはより発展的で創造的な活動が求められています.私たちは,会員制のソーシャルビジネスを成長させることで,大学からより創造的な人材が育ち,社会的課題の解決への貢献を通じて新しい価値を生み出し,その成果がさらなる教育に還元されていくという,新しい仕組みを作り出したいと考えています.

 持続可能な社会を拓くための私たちの挑戦をぜひご支援ください.